自作キーボードに手を出す前に出会えてよかった|コンパクトさの極地「EPOMAKER TH40」|レビュー

最近自作キーボードが流行っているというか、人気な風潮があるように感じているのですが、その中でも個人的に目を惹くポイントがコンパクトなレイアウトサイズのキーボード。

自作ならではのミニマルさで通常のキーボードとはまったく違うレイアウトで運用ができます。

そんなコンパクトなレイアウトですが、自作ではなく既製品でも発売されていました。

それが今回レビューしていくEPOMAKERの「TH40」。

なんと40%レイアウトという、数字キーや矢印キーもないコンパクトさの極地とでも言うべきキーボード。

本来であれば普通にレビューしていく予定だったのですが、思ったよりもこのキーボードには使用までに苦戦したポイントや愛着が湧いたポイントが出てきたので少し切り口を変えてレビューしていきます。

今回の内容としては「コンパクトな自作キーボードに手を出す前にTH40に出会えてよかった」と心から感じた理由やその過程について順を追って話していく予定です。

現在Keyball39やiPad mini用の自作キーボード「DRESSTHING」あたりが気になっている人には特に聞いて欲しいことがたくさんあるので、最後までお付き合いお願いします。

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EPOMAKER

提供:EPOMAKER

EPOMAKER TH40の特徴

  • 40%コンパクトレイアウト
  • ガスケットマウント採用
  • VIAによるキーマップ設定
  • 45gの押下圧
  • 価格14086円(1月15日現在Amazon)

特徴はなんといっても40%レイアウトのコンパクトなデザイン。

そして、コンパクトでミニマルながらかなり機能性は高いキーボードとなっています。

打鍵感はコトコトとした感触で、Lofree Flow味を感じるタイピング感です。

しかし、TH40は底打ちした後の反発がやや弱めに感じるので、軽やかな打鍵感というよりはしっとりとした打鍵感と表現した方が適切な気がしています。

押下圧は45gで、ホットスワップも対応していて好きなキースイッチに変えることも可能です。

接続方式は有線・無線・2.4GHz接続と多機能で、背面にはチルトも搭載。

ミニマルな形状に反して、キーボードとしてあると嬉しい機能は全部盛ってあるような印象です。

自作キーボードに手を出す前に出会えてよかった

ここからは「なぜ自作キーボードに手を出す前に出会えてよかった」と感じるに至ったのか、どこに感動して何に困ったのかなどについて順を追って話していきたいと思います。

失って初めて気が付くこと

正直40%レイアウトのキーボードは可愛い見た目に騙されてなめていたというほかありません。

実際に使い始めてみたら想像以上に使いこなせなくて驚いてしまいました。

使用前の自分としては「数字キーもそこまで多用しないし、ファンクションキーなんてほぼ使わない。ブログ書くのがメインの用途だから意外と40%でも問題ないのでは?」と考えていました。バカです。

普段テキスト入力がメインだとしても、「キーはあるけど打つ回数が少ない」のと「そもそもない」には大きな違いがあります。

数字キーや矢印キーもあまり使っていない印象でしたが、なくなって初めて「意外と自分このキー使っていたんだな…」と感じるキーがたくさん出てきました。

じゃあなんとかこのキーを打てるようにしなくてはいけない、というところですが、さすがにそこはメーカーも考えてくれています。

デフォルトでショートカットキーが設定されていて、それを押せば矢印キーや数字キーが使えるように。

基本はFnキー+〇〇のような感じで、例えばFn+Qを押すと「1」が入力できるといった感じです。

このようなFn+1つのキーだけであればよかったのですが、左右の矢印に関しては「Fn+R+Alt=←」「Fn+R+Ctrl=→」のように、3つキーを押さなくては表示されない使用でした。

矢印を選択するたびに3つ指を使うのもスムーズではないし、これまでMacの矢印ショートカットを使ってこなかった自分には矢印キーの位置で押さない矢印キーは指に合わない。

そこで登場するのがVIAによるキーマッピングです。

VIAと向き合える

今回TH40を使ってよかったと感じるのはVIAとしっかり向き合えたということ。

僕のチャンネル視聴者さんはそこまでキーボードにどっぷり浸かっているわけでもない人が多そうなので、ここで少しVIAの説明を。

VIAとは簡単に表すと汎用的なキーマップソフト。

キーマップソフト自体は各メーカーオリジナルのソフトを出しているところもありますが、VIAはどこかのメーカー専用というわけではなく、さまざまなキーボードで使用可能です。

例を挙げると今回レビューしているEPOMAKERはもちろん、Keychronや以前レビューしたDOIO KB16なんかもVIA対応。

このように幅広い機種やメーカーに使えるのが特徴なソフトです。

これを使うことで好きな場所に好きなキーを割り当てることができます。

このキーマップを駆使して自分好みのキーボードに仕上げていくイメージですね。

そしてこのVIAは自作キーボードでもお馴染みのソフトとなっており、今後自分が自作キーボードに手を出すなら必ず通るだろうな、と考えてはいたもののあまり手を出してこなかったソフトになります。

現在のキーマップ

TH40には4つのレイヤーを設定できるようになっています。

このレイヤーを駆使して使いやすいキーボードに仕上げていきました。

僕がこのキーボードを使って不便・いつもと違う!と感じた点は以下。

  • 矢印キーを簡単に打ちたい
  • 伸ばし棒意外と使う
  • 「」がないと記事制作でちょっと困る
  • !や?などの感嘆符を打てるようにする
  • 音量の増減を操作
  • かなと英数を簡単に切り替え
  • できるだけいつも使っているキーボードと同じ位置になるようにしたい

この問題をすべて解決しないと僕はキーボードを満足に使えないようでした。

ではこれらの設定をしていきます。

どうやって上記の問題を解決するのかというと、特定のキーを押している間だけ別のレイヤーに切り替わるという機能を使って対応することに。

VIAのLAYERSというタブを開いてみると「MO」とか「TG」とかいろんなキーが出てきます。

今回はこのなかの「MO」を駆使しました。

レイヤー0の状態

「MO」は説明した通りの、「キーを押している間だけ別のレイヤーに切り替わる」という機能があり、このキーを僕は左端のCtrlの位置に設定。

これによって「MO1」を押している間レイヤー1に切り替わり、レイヤー1に設定してあるキーを押せるようになります。

僕はレイヤー1に画像のような設定をしていて、例えば、MO1+A・Sで音量の増減ができるように設定していますし、MO+Alt・App・Ctrl・>の位置のキーを押すことで矢印キーが反応するようにしました。

レイヤー1の状態

この設定によって、MO1を押している間はいつものキーボードの位置で矢印キーや伸ばし棒などが使えるようになり、操作感としては使い慣れた配置と大きく変わらずに使えます。

左端のCtrlを押して別レイヤーの機能を使うというのはHHKB時代からの操作で指も慣れているので、ここまで設定してようやくTH40が「打てる」キーボードになってきました。

かなと英数の切り替えについては、Anyキーを使ってなんとか簡単に切り替えができないかといろいろ試してみたのですが結局変えられず、これはVIAではなくMacBook側の設定でCapsLockをかな英数の変換キーに設定するという、大元の設定を変更するというやり方で無理やり対応させました。

本来はVIAでなんとかできそうなのですが、僕は勉強不足で設定ができなかったので、今回はひとまずこれで対応。

TH40の注意すべきポイント

ここからはTH40を使うまで大変だったことについて共有しておきます。

VIAの設定までに一手間ある

僕は盛大にひっかかり、他の人はたいして問題にしてなさそうなところにVIAの設定にたどり着くという工程があります。

なんのことかと言うと、TH40はPCと接続しただけではVIAが反応しません。

以前レビューしたDOIO KB16は接続したら勝手にVIAが認識してくれたのですが、TH40はそうではなく、「JSONファイル」というものをインストールする必要があるようだったのです。

このファイルをVIAに読み込ませると認識するという流れで、多くのブロガー・YouTuberはあっさり通過していました。

しかし、僕はこの方法を見つけ、JSONファイルを読み込ませても反応せず、結局年末年始はずっとこのトラブルシューティングに時間を溶かしていました。

サポートにも問い合わせて、実際に設定をしている動画ファイルまで送ってもらうという手厚いサポートを受け、それでもなかなか解決せず…

最終的に設定できたのですが、いまいち何がよかったのかがわかっていません。

しかし、設定できたときとできなかったときの違いは置いておきます。

できなかったとき

VIAに接続できないぞ?となったときにいろいろ調べると「JSONファイル」というものを読み込ませないといけないということが判明。

しかしこれがどうにも読み込まない。

何度やっても読み込まないのでEPOMAKERのサポートに問い合わせをしました。

最初に言っておきますが、めちゃくちゃ手厚くしっかりサポートしてくれたので感謝しかありません。(対応が英語だったのはちょっと大変だったけど)

で、EPOMAKERのサポートに問い合わせた最初の提案としては「JSONファイルが読み込まれているかもう一度試す」こと。

そこで教えてもらったJSONファイルはV3のもので、どちらも試しましたがVIAは認識しませんでした。

そして次に提案されたのがファームウェアのアップデート。

しかし、このアップデートがどのようにして行えば良いのかわからず、ずっと作業が止まることに。

ファイルを開いても何も起きず、どこかのアプリに読み込めば良いのかもわからず…

この辺りのJSONファイルの手順とかファームウェアのアップデートについての情報が少ないのはかなり困りました。

結果、ファームウェアのアップデートはWindows機でしかできなかったようで、Macユーザーの僕にとって大ピンチでしたが、唯一持っているWindows機であるROG ALLYのおかげでなんとかTH40のファームウェアアップデートに成功。

できたとき

  • ファームウェアのアップデートをした
  • JSONファイルV2バージョンの有線用を読み込ませる→成功
  • JSONファイルV3バージョン(2.4GHz用有線用)を読み込ませる→失敗

ようやくできたのはファームウェアアップデート後にV2のファイルを読み込んだとき。

サポートから送られてきた案内にはV3のファイルが指定されていたのですが認識がされず。

途方にくれていたときに見つけた記事があったのですが、その記事のなかで「このファイルはV2バージョンでV3バージョンもあるのですが、そっちだとうまく行かないので注意!」という記載を見つけ、V2ファイルで試してみたところようやく認識に成功!

あまりにもVIAが繋がらないのでけっこういろんな人のレビューを見たのですが、誰もVIAに手こずったという記載がなくて、「みんなそんなにスムーズに認識されたの!?」というような感じですが、僕と同じく悩んでいた人は一応このファームウェアアップデート→V2ファイル読み込みでいけるかもしれません。

このあたりちゃんと記載している人いなかったので、情報共有が足りていないのか、もしくは業界的には当たり前で僕の知識不足なのかといったところ。

当たり前の知識すらないままVIAに手を出した僕が悪かったのかもしれないですが、JSONファイルも初めてだしVIAもそこまでさわったことがない状態で、なんとか認識できるようになるところまでくるのがかなり大変でした。

タイピングには慣れが必要

ようやくVIAが使えるようになってキーボードが使える!となったのですが、次の問題はタイピングの慣れと微調整。

やはりこれまでずっと最低60%レイアウトのキーボードを使ってきたので、40%レイアウトに指がなかなか馴染まない。

40%レイアウトやTH40のキーボードの形に合わせてキーを配置してみたのですが、思いのほかしっくりこないという事態に。

例えば矢印キーですが、デフォルト同様今は右端に矢印キーを置いていますが、当初は↑の位置が左にズレているのが気持ち悪かったので左端の整った区画を矢印キーとして使おうと考えて設定しました。

?・Ctrl・Win・Altの位置が綺麗に矢印キーに使えそうだった

しかし、反射でキーを打つとどうしても右手で矢印キーの位置を押してしまうのです。

!や?などの感嘆符も同様で、打ちやすくするためにzやxのあたりに割り当てをしていたのですが、意外と瞬時に押すことができず、「どこだっけ」と一瞬フリーズしてしまうことが多々ありました。

時間にしてみればそこまで長くはないのですが、反射でタイピングできないのがかなりストレスを感じる要因であり、無視できない課題に。

このような悩みの末、けっきょく矢印キーは左端に設定しましたし、感嘆符や「」などもなるべく通常のキーボードと同じ位置で打てるように場所を調整。

レイヤー1にデフォルトにないキーを割り当て

このように、専用の配置で最適化を図るというのも1つの手段なのですが、僕は普段の習慣を矯正してまでTH40をタイピングしようとは思えず、TH40を普段のキーボードっぽく調整していくという作業をしていました。

ミニマルレイアウトへの弊害の気付き

これは個人の慣れによるところも大きいですが、このキーボードは本来Fnキーやレイヤー切り替えのキーをスペースの間にある中央のキーに設定して、親指でこのキーを押して、他のキーを別の指で押すという操作を想定していたのではないでしょうか。

しかし、僕はこの親指でFnキーを押すという操作になれず、自分がずっと使ってきた左小指で左端のFnキー(レイヤー切り替えキー)を押して操作をするという設定を採用しています。

TH40の使用を通して僕はこの小指が切替操作の軸になるというタイピング法以外が馴染みにくいということに気がついてしまいました。

TH40を使用する分には問題ないのですが、問題はKeyball39やiPad mini用の自作キーボード「DRESSTHING」の使用です。

僕はコンパクトなサイズのキーボードを使う際に左小指を軸にレイヤー切り替えを行う。しかもその位置はCtrlがある位置にFnキー(切り替えキー)を設定できるのが1番馴染みます。

しかし、Keyball39DRESSTHINGにはZの列が端であり、僕がベストポジションだと感じている場所にはそもそもキーが存在しません。

これまでKeyball39DRESSTHINGコンパクトに使えて良さそうと思っていたのですが、レイヤー機能の多用が前提となるこれらのキーボードで自分が最適だと考える位置にキーが存在しないのはかなりネックではないか?と考えるように。

コンパクトなキーボードへの興味はむしろ増えましたが、TH40を使うことによって、「自分の手に馴染むコンパクトレイアウトの条件」への理解が確実に深まったと感じています。

キーボードを買ってからそのキーボードに馴染んでいくのももちろん良いと思いますが、自分の理想を追求していくタイプの自作も楽しそうなので、手を出す前に自分の理想や使いやすいポジションについて確認できたのは非常に良い機会となりました。

TH40がおすすめな人

VIAの操作ができる・自分で調べる力がある
既製品のコンパクトキーボードを使ってみたい人

このキーボードからこんなに多くの学びを得られるとは思っていなかったので、非常にありがたい存在となりました。

快適に使うためにはVIAの設定は切っても切り離せない存在となるので、このアプリを使えるか使おうと思える人が手に取って満足できるキーボードだと思います。

40%というなかなかめずらしいコンパクトなレイアウトで軽量さもあるので持ち運びたくなるようなキーボードです。

実際にはフルプロファイルのキーボードなので持ち運ぶにはちょっとゴツいかな?と思わなくもないですが、カスタマイズを通して愛着が湧いてくるとだんだん持ち運んでどこでも使いたくなってきます。

設定に始まりタイピングの慣れなど、指に馴染むまで使って初めて良さを知るようなキーボードなので、使っていくうちに特性の理解や愛着が深まるキーボードだと感じました。

まとめ

製品コンセプトや使いこなすまでの過程を踏まえて「良い」キーボードに出会えたように感じています。

シンプルに打鍵感もよかったので、同メーカーの別製品もかなり気になってきました。

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