最近自作キーボードで話題になっている配列、みなさんも薄々気になっているのではないでしょうか。
そう「オーソリニア」と呼ばれる配列のキーボードです。
試してみたいと思いつつも、自作はハードルが高くて興味はあっても試せない…と1歩を踏み出せていない人も少なくないと思います。
今回レビューするのは既製品かつ最高のビルドクオリティのオーソリニアキーボード、Keychronの「Q15 Max」です。
フルアルミの高級感のあるボディ、そしてそこに現れるオーソリニアのキーボード。
多種多様なキーボードを発売しているKeychronはオーソリニアにもしっかり対応していました。
キーボードマニアはおそらく目について離れないこの配列のキーボード、慣れ親しんだ配列から一度離れてみて、まだ見ぬ最適を探す──そんな冒険をしてみるのはどうですか?
今回は実際にQ15 Maxを使ってみてわかったことや気になったポイントについてまとめていきます。
提供:Keychron
Q15 Maxの特徴
- オーソリニア配列
- アルミニウムの削り出しボディ
- 2.4GHz & Bluetooth接続
- QMK&Launcherウェブアプリでプログラム
- ガスケットマウント
- 分割スペースバーデザイン
- 定価43,890円(4月末Amazonの価格)
なんといっても特徴はこの格子配列とも言われるオーソリニア配列。
通常キーが交互に顔を出すような配列になっていると思うのですが、これはきれいに整列している形状。
独特な配列すぎてギョッとしてしまいますよね。
実は今自作キーボードでこのオーソリニアが熱くなっています。
ガジェットYouTuberでお馴染みのmonographの堀口さんが手がける自作キーボード「Conductor」もオーソリニアのキーボードですし、iPadとの併用を想定している自作キーボード「dotmatrix40」もオーソリニア。
僕が持っているiPad mini用自作キーボードの「DRESSTHING」も厳密にはオーソリニアではないのですが、きれいに整列した並びという点ではオーソリニアに源流があるような配列となっています。
このようにまだまだメジャーではないものの、確実に熱い波が来ているのがオーソリニア。
そんなオーソリニアの主戦場は自作だったわけですが、なんとKeychronからメーカー品として登場しました!
しかもラインナップはKeychronのなかでもトップラインのQシリーズ、そして最高ランクのMax。
筐体の高級感や打鍵感、機能性も詰め込んだ完成されたオーソリニアという立ち位置のキーボードです。
Q15 Maxのデザイン
カラーについてはブラックとホワイトの2色展開になっています。
色味についてはかなり深めの黒といった感じで、ボディのメタリックさともあいまってかなりかっこよく、高級感も表現されているように感じました。

ボディについては特徴のところでも触れた通り、フルアルミになっていてずっしり重たく持ち運べるような重量ではありません。
ワンポイントの装飾のようなところはなく、すべてブラック一色の統一したデザインとなっています。
また、キーキャップとも色合いが似ているので、全体的な統一感があるように思いました。

レイアウトについてはオーソリニアですが、左右の上部にボリュームコントローラーが付属しているなど、少し特殊な形状も見受けられます。

とはいえ基本的にはきっちりとそろった配列となっているため、デザイン的なきれいさは他のキーボードと比べて頭1つ抜けていると言えるでしょう。

また、ズレを整えたことでキーボードがコンパクトになっているところも大きな魅力です。
側面は上部に各種スイッチなどが搭載されていました。

背面にはゴム足が4箇所ついていて、チルトはありません。

チルトはないので細かな角度調整はできないものの、元から傾斜はついているので、その傾斜である程度はカバーできると思います。

Q15 Max レビュー
ここからはQ15 Maxの各項目をレビューしていきます。
レイアウト・キー配列
普段は打鍵感から見るのですが、さすがに特徴的すぎるので今回はレイアウトから。
レイアウトはオーソリニアと呼ばれる配列で、格子状にキーがきれいに整列しているのが特徴です。

普段使われているキーボードのズレた配列(QWERTY配列+ロウスタッガード)というのはタイプライターが作られた際に採用されたのが元となる配列。
そのため、このズレの理由というのはタイプライターの詰まりを防ぐためにデザインされた配列であって、人間工学的に考えられた設計とかそうわけではないです。
現在でも使われている理由としては社会インフラとして定着してしまったからという理由が大きく、最適解を目指すのであれば実はいろんな配列があります。
ではオーソリニアのメリットとはなんなのか。
これは明確にあって、指の動きが省エネになります。
キーが縦横きれいに並んでいるということで、指を斜めに動かす必要がなく、指の移動距離が短くなって手首の負担が減るという理屈です。
例えばですが、縦横綺麗に並んでいるからこそ、人差し指の列、中指の列といったような感じで、縦割りで担当するキーを決められるのはわかりやすいですし、慣れると打ちやすいはず。
合理で考えると実はロウスタッガードよりも利便性が高いと言えるでしょう。
一方で、慣れの問題もあるので結局ロウスタッガードの方が打ちやすいということもあるのですが、この辺りは個人の適正の問題によるところも多いにあると思います。
分割できていないと逆に疲れるかも
しばらく使ってみた体感としては一体型のオーソリニアは肩や腕に疲れを感じました。
理由としてはキーボードの中心に向かって手を配置すると、
①手は自然と斜めを向く
②そしてその自然な状態からオーソリニアで打つために正面方向に手首や腕を内側にたたみ込む
③肩や腕に余計な負担がかかるので疲れやすい
意外と中央に手がよって、さらに斜めではなく完全に縦に手を置くのはけっこう腕を捻っている感じがして長時間打っていると肩に疲れがたまりました。
また、中央のタイピングをするときに左右の手が重なってしまうと親指が窮屈になってしまうのも手痛いデメリット。
これの解決策というか最適解がおそらく分割。
分割のオーソリニアであれば、腕の方向から自然な向きで縦方向に手を置いて打鍵ができます。
これであれば腕にも肩にも負担がなくてスムーズに打鍵ができました。
一体型の据え置きオーソリニアはミニマルなデザインで見た目は好きなのですが、使用の合理で考えると分割ではないといけないのかもしれません。
「の」と「も」が打ちにくいのが地味にストレスかも
これは打っていて気がついたんですけど、オーソリニアになったことによって、nとmの位置からoまでの距離が伸びたんですよね。これが地味に打ちづらい。

オーソリニアは基本的には打ちやすいのですが、ここだけ距離がきになるくらい変わってしまって指を意識的に広げないと打てないくらいというか、人差し指を一度キーに置いて支えを作った状態でOまで叩きにいくというか、この絶妙な距離がしんどい。
他の入力は気にならないのですが、この「の」と「も」だけ打ちづらくて気になるんですよね。
このあたりが慣れか適正が必要かもしれないです。
打鍵感
Q15 Maxは3つのスイッチを選べます。
赤軸・茶軸・バナナ軸の3つがあるのですが、今回は茶軸。

これまで赤軸とバナナ軸は使ったことがあるので、初体験の茶軸になります。
茶軸については押下圧55gの設計となっていて、一般的なスイッチから見ると少し重めな印象。
押し始めこそ少し重みを感じるものの、引っかかることなくスムーズに落ちていくので打鍵した感覚としては非常に軽やか。
慣れるためにけっこう使っていたのですが指が疲れるといった感覚もありませんでした。
また反発の力も強めなので、指が自然な力で元の高さまで戻ってくれるので、常に跳ねるような楽しい感覚でタイピングができます。
衝撃の感覚ですが、ガスケットマウントを採用していて、さらにその精度も高いということがあるのか、底まで打っても衝撃を感じません。
フルアルミのボディながら非常に優しく受け止めてくれます。
さすがKeychronの最高級ラインのQシリーズだといったところ。
ガスケットマウントのこのたわみがものすごくよく機能しているように感じました。
打鍵音・静音性
打鍵音に関してはフルアルミボディであることを考えるともっとキンキンとした高音が鳴ってもおかしくないところですが、意外と抑えられているようにも感じました。
ガスケットマウントは衝撃吸収の他にも鳴りの調整もしているとのことなので、このあたりが作用しているのかもしれません。
不快な高音成分の多い音ではなく低音寄りの音をしているため、意外と周囲に迷惑をかけずに使えるかもしれません。
とはいえ、強く叩くと響く音は出ますし、普通に叩いていても静音さが売りのキーボードと比べると音は鳴ります。
そのため、職場でつかっているとさすがに注目は集めるというか、自分のタイピングの開始と終了はバレるような気はします。
しかし、上記を逸するような、周囲の集中力をそいでしまうほどの大きさでも音でもないと思うので、自宅以外の使用でも対応できるキーボードだと感じました。
キーマップ
キーマップについてはKeychron Launcherウェブアプリという公式のキーマップソフトがあるのでここから設定ができます。
MacOS・Windowsのどちらとも対応していますし、ウェブから編集ができるのでアプリのダウンロードも不要で使いやすいです。
接続すると一般的なキー配置の変更や割り当てはもちろんレイヤー機能の設定、マクロを設定することもできるので設定の幅は広いと言えます。
そもそもとしてQ15 Maxは形ことそオーソリニアで少し驚いてしまうかもしれないですが、キーの数的にはファンクションキーを除いた65%レイアウトといったところ。
ファンクションキーをよく使う人にとっては不便かもしれないですが、普段そこまでファンクションキーを使わない人にとってはそこまで凝ったカスタマイズをしなくても使えるキーボードでしょう。
僕は特に設定なしでデフォルト状態で使用しています。
Q15 Maxがおすすめな人
据え置き型オーソリニアが気になっている人
ビルドクオリティの高いオーソリニアが欲しい人
やはりなんといっても特徴はこの格子配列と呼ばれるオーソリニアの形状。
この独特な形が気になってしまったら体験してみないことには夜も寝れなくなってしまうでしょう。
とはいえ、市場には既製品のオーソリニアというのは少なく、自作ではないオーソリニアを使うと考えるとQ15 Maxに落ち着くのではないかと思います。
価格については定価4万円超えをしていますが、Amazonのセール対象品にもなるので時期を見計らえば35000円くらい。
この価格も別に安くはないですが、オーソリニアの自作キーボードを買うとなると、ボディ・スイッチ・キーキャップ含めて3万超えるのはザラだと思うので、著しく高いというわけでもないと思っています。
初めてオーソリニアを使ってみた印象は「可能性を感じるが、模索は必要」といった感じ。
指の移動を少なくするという観点とか実際に使ってみた使いやすさとかはあります。
一方で普段使うキーの位置のズレで慣れなかったり、多用するキーが打ちづらくなってしまったり、ロウスタッガードの良さを感じる場面もありました。
ビルドクオリティや機能性については文句がないほど高品質で、あとはこの配列に自分がどう慣れていくのかというところだけ。
最適なタイピングができる瞬間というのがあって、その瞬間にでくわすと「なんだこの動き!気持ち良い!」みたいな謎の感動に包まれます。
ハマる人はめちゃくちゃハマるキーボードだと思いますし、使えば使うほど体に馴染んできて最高の相棒になるのではないでしょうか。
まとめ
ずっと気になっていながらも自作ばかりでなかなか試す機会のなかったオーソリニアをようやく体験できて感無量です。
可能性を感じつつも一体型じゃないのかも?でもこれは慣れのせい?スムーズに打てると楽しい!みたいな複雑な感情が混ざり合ってまだ正確にこのキーボードを捉えきれてない自分がいます。
まだまだ使い込んで、新たな可能性を探っていこうと思います。