使いやすさと使いにくさが交互に顔を出して情緒が乱される|コンパクトな静電容量無接点方式キーボード【NiZ Atom68 Black RGB】

静電容量無接点方式のキーボードと言えばHHKBやREALFORCEが有名ですが、第3の選択肢としてNiZというメーカーをご存知でしょうか。

HHKBやREALFORCEのキーボードが定価35,000円超えのところ2万円台で購入できる機種があるというのが魅力のメーカーです。

僕も実際に以前Atom66を所有しており、つい先日はTC84というキーボードをレビューしました。

今回はそんないつも愛用しているNiZの「Atom68 Black RGB」をレビューしていきます。

正直「使いやすい」と「使いにくい」が交互に顔を出してきたり、価格の問題もあってこのモデルに関しては手放しですすめられるいうわけではないのが率直な感想。

僕が感じたことについてはすべてこれからまとめてみます。

メリット!
デメリット…
  • 静電容量無接点方式採用
  • 柔らかな打鍵感で指疲れがない
  • 静音性が高くどこでも使える
  • 定価が約4万円と高い
  • 見つけるのが難しい情報がある(キーマップ、Fnレイヤーなど)
  • キーキャップが想像以上に茶色
YouTubeはこちら

提供:NiZ

Atom68 Black RGBの特徴

  • 静電容量無接点方式採用
  • 65%のコンパクトなレイアウト
  • 専用のキーマップソフト
  • 鮮やかな発光パターンを持つRGBバックライト
  • Bluetooth×2・レシーバー・有線対応

NiZにはさまざまなサイズのキーボードがあるのが特徴で、この点についてはHHKBやREALFORCEに勝る点だと感じています。

カラーについても今回レビューするブラックモデルや定番のホワイトなど、選択肢が多いです。

Atom66との違い

似たようなサイズ感としてAtom66というモデルがあります。

こちらとの違いについては右端の列の有無です。

Atom68には右端の列にPgUpなどのキーがあり、いわゆる75%レイアウトでよくある正統派なサイズ感。

65%のレイアウトにするにあたって最上段のファンクションキーをなくしています。

一方でAtom66に関してはエンターキーの下に矢印キーが来るタイプ。

また、US配列なのにも関わらずバックスペースが小さいのも特徴的です。

バックスペースがJIS配列のときのような小さなキーになっているので、USで慣れている人にとっては違和感があるでしょう。

僕がまた使うならバックスペースの隣のキーもバックスペースに設定して使用するんじゃないかと思います。

Atom68 Black RGBの外観・付属品

Atom68 Black RGBの同梱物やデザインについてチェックします。

同梱物

  • USB-Cケーブル
  • USBレシーバー
  • Mac用のキートップ
  • キー引抜工具
  • 交換用スプリング
  • 説明書

デザイン

カラーについては今回はブラックモデルを選択。

ほとんどのモデルがホワイトであり、ホワイトのイメージがあったのですがブラックを見つけたので今回選んでみました。

キーキャップのカラーについてはブラックとブラウンの2色構成となっています。

ブラックというモデルではあるものの、ブラウンの占有率が強いうえにブラックのキーも若干茶色に寄っているような感じもするので、ブラックというよりはブラウンモデルという方が正確かもしれないと思わせるほど。

ボディについてはブラックなのですが、少し明るめな印象を受けるので、キーキャップと馴染むような感じ。

キーキャップの側面にはFnキーと同時押しすることで使える機能のロゴが刻印されているものが多数あります。

コンパクトなレイアウトですが、Fnキーと組み合わせることで、見た目以上に多機能に使えるでしょう。

背面にはゴム足・給電ポート・スタンドが搭載。

スタンドについては2段階の調整が可能で、細かな角度調整ができます。

給電ポートは中央にあり、USB-Cで接続。

有線でも接続できるようになっており、有線接続時にはボディに空いたこの溝にケーブルをはめることで、余計なケーブルを出さずに機器に接続できます。

Atom68 Black RGB レビュー

ここからはAtom68 Black RGBの各項目についてレビューしていきます。

打鍵感:しっとり柔らかめなタッチ

しっとりして柔らかい、という印象を持ちました。

まず柔らかさというのはNiZ共通の特徴だと思っていて、僕が以前所有していたAtom66もそうですし、以前レビューしたTC84も同様です。

これはNiZの特徴である静電容量無接点方式を採用した押下圧35gのスイッチに起因するところ。

静電容量無接点方式とは「キーが押し込まれた際に電極同士が物理的に接触することなく、一定の距離まで近づくと静電容量の変化を精密に検知し、入力を認識する」という方式で、要は押し込まなくてもキーが感知されます。

そのため軽いキータッチでもキー反応してくれるので、指疲れの軽減につながるわけです。

そこに加えてNiZのキーボードはスイッチの押下圧が35g。

HHKBやその他のキーボードも比較的45gを採用していることが多く、標準が45gであると考えると、35gは軽い打鍵感であると感じられます。

「しっとり」については押下したあとの反発が弱いところから感じました。

打鍵した指がスッと落ちたあと、反発で戻ってくる感覚が少なく、指にすいつきながらふわっと戻ってくるような感覚があります。

このキーボードくらいの反発であれば問題なく打鍵ができるのですが、ここからさらに反発が弱くなると、タイピングごとに指を自分の力を使って戻すような感覚になるので、疲れやすくなってしまうでしょう。

反発の強さでいうとTC84の方が強く、軽やかにハキハキ打鍵できるように感じました。

HHKB・REALFORCEと近い系統の軽い打鍵感が欲しい人はTC84の方がよく、もう少し落ち着いた指に吸い付くような打鍵がしたい人はAtom68 Black RGBが良いのではないかと思います。

打鍵音・静音性:低音よりで非常に静か

これはしっとり柔らかめな感触の効果もあってか、非常に静音性が高いです。

別モデルのTC84よりも低音によっていて、このキーボードであれば職場で使っても問題ないくらいの音でしょう。

カチャカチャとした高音が鳴らないので、音が遠くまで響きづらく、静かな環境で使っても目立ちません。

手持ちの静電容量無接点方式のキーボードのなかでは1番静音性が高いのではないかと感じました。

キー配列・レイアウト

レイアウトについてはコンパクトな65%キーボードとなっており、最上段のファンクションキーがないタイプ。

右側にはPgUpやPgDnのキーがあり、75%レイアウトのような配置。

コンパクトさ重視でHHKBのような配列が良い場合は、矢印キーがエンターキーの列にそろえられているAtom66が良いでしょう。

コンパクトだからタイピングや機能性に支障があるかというとそうではなく、初期状態からFnキーと組み合わせることで動くキーが多数あります。

この動作についてはキーの側面にロゴが印字されてあるので、これをみることである程度わかるでしょう。

少し困ったところはWinMacの切り替えボタン。

他のキーは単押しでさっと切り替わるのが多いのですが、WinMacの切り替えについては長押しが必要です。

Macユーザーがこの設定を行わないと、⌘がALTの位置に現れないのでタイピングしにくいまま使用しなくてはいけなくなるので要注意。

基本的な操作はもともと設定されているこの機能でカバーできると思いますが、この操作では満足できない人はキーマップソフトを使って自分好みのカスタマイズをさらにしていきましょう。

キーマップ:使い勝手はかなり悪い

カスタイマイズできる幅は広く、シンプルにキーの割り当てを変えるだけにとどまらず、Fnレイヤーを設定可能。

さらにそのFnレイヤーは左右のFnキーを押したときで操作が変わるという設定までできる。

使いこなせば汎用的なキーマップソフト並みにいろいろなカスタマイズができるポテンシャルがあります。

しかし、そもそものこのソフトがあまり使いやすいと言えないのが難点。

まずWindowsにしかキーマップソフトが対応していません。Windowsで設定したあとはMacにも反映できるのですが、Macだけしか持っていない人にとっては設定ができず苦しい思いをする可能性があります。

そしてWindowsのソフトを開いてみると対応言語が中国語と英語のみ。

なんとなくはわかるのですが、なんとなくまでしかわかりません。

最悪言語は英語でも良いですが、ユーザー数の問題からか、このソフトを詳細に説明した記事や動画の数が少なく、パッと検索してすぐに欲しい情報にたどりつけるかどうかは微妙。

他の言語だとしても使用ユーザーが多ければ情報が蓄積されていてわからなくてもなんとかなることが多いのですが、NiZはそうもいかず…

基本的な操作くらいであればなんとかたどりつけそうですが、こだわったカスタマイズをする場合は自分でひたすら操作するか、情報の海の中から目当ての情報を探し出す根気が必要になりそうです。

自社でソフトを開発しているのは素晴らしいと思うのですが、わかりにくいソフトなのであればVIAのようなオープンソースで情報もたくさんあるソフトに対応してくれた方が嬉しかったというのが率直な感想。

その他気になるところ

コンパクトで多機能なキーボードなのですが、気になったところもあったので共有します。

キーが茶色すぎない?

別に嘘つかれたわけではないんですが、到着当初「キーキャップの色指定とかあったんだっけ」と思ってしまうほど中央のキーが茶色でした。

公式HPにもブラックと色違いのキーが掲載されているので、その通りのキーボードが来たのですがちょっとイメージとズレるな、というところ。

ブラックモデルという気持ちでいたのと写真がやや落ち着いた色味だったので、RC1のようなブラックとグレーブラックの組み合わせを想像してしまっていました。

ブラックというからには黒なんだろうと思い箱を開けると、想像以上の茶色が視界を奪います。

好みもあるとは思うのですが、僕はブラックならもっとブラックの方が嬉しいし、こんなに茶色ならちょっとカラーどうしようかなと悩んでしまうほど。

今更ですが、この色ならホワイトモデルの方が好きです。

初見ではきつい仕様が多い

わかりにくい要素がちょっとずつ多いと思っています。

1つめがRGBライトについて。

Bluetoothだとこれ点滅しません。

どうやったら点灯するのか探していたところ、とあるYouTuberさんが紹介していたのでようやくわかりました。

Bluetooth接続の場合はFnキー+↑+↓を長押しする必要があります。

この方法なのですが、説明書にもネットにも載ってなく、動画内ではメーカーに問い合わせて初めてわかったと言っていました。

僕もけっこう探したもののないな、と困っていたので「やっぱりないのか」と納得。

その後もう少し探した結果、Amazonの販売ページの製品説明の画像の中に記載を見つけました。

文字検索で引っかからないのは罠すぎる…

せっかくのRGBモデルなのにその光らせ方がわかりにくいって致命的では?

もう1つがWinMacの切り替えについて。

これもWinMacの切り替えボタンはALTの部分に書いてあり簡単に見つかります。

しかし、Fnキーと同時押しをしても切り替わった様子がない。どうしたものかと悩んでいたところ、これは長押しで反応すると書かれた記事を見つけました。

他のFnキーとあわせた入力に関しては単押しで済むのに、これは長押しというのは不意打ちすぎ。

なかなか気がつけず操作に困ってしまいました。

このように、実際は操作ができるものの、説明書などに詳しい記載がなくて困る場面がちょっとずつあります。

わかれば簡単なのですが、わかりにくいのは問題があるように感じました。

割高感がある

公式サイトで40,700円、Amazonで37,000円。

正直4万円はちょっと高すぎかな、という印象。

本来NiZの魅力は「HHKBやREALFORCEより1万円くらい安い値段で静電容量無接点方式のキーボードを買える」というところにあったように感じるので、それが4万円になってしまうと競合と同じというか、なんならHHKBやREALFORCEよりも高いほど。

同じ価格なのであれば有名メーカーの方でも良いかな、と思ってしまいます。

しかし、ホワイトモデルのRGBなしならちょっと話が変わってきて、定価が33,000円、セール時であれば26,400円まで値下げ。

60%のAtom66であればAmazonのセール時に去年の10月は25,500円になっていました。

2万円中盤くらいであればHHKBやREALFORCEとの差別化があるように感じます。

ブラックモデルは値下げもしていないようなので、ずっと価格が高いまま。

特別な理由がない限りホワイトモデルでも良さそうな気がしてしまいます。

Atom68 Black RGBがおすすめな人

コンパクトかつ光る静電容量無接点方式のキーボードが欲しい人
情報収集に嫌気がささない人

まず光らなくて良いならRGB無しモデルを選びましょう。

光の有無で2000円ほど価格が変わるので、ここは判断が別れるところ。

キーボード自体の話をするとNiZということもあって、打鍵感や静音性というところについては問題なく高品質です。

柔らかなキータッチで、指疲れなくタイピングし続けることができるでしょう。

ソフトによるリマップや初期状態からFnキーを押すことで可能になる多機能なキーなど、カスタマイズ性に優れているので、自分好みのキーボードに整えられます。

一方で、最適なキーボードや好きな機能を使うためにはある程度のハードルを超える必要があります。

リマップをするためのソフトは日本語対応していないのである程度の英語ができる必要があり、Fnキーについては単押しで対応するものもあれば長押しでなければ反応しないキーがあるなど、細かな仕様を自分で解明しなければなりません。

この辺りを見つけていかないと、微妙に使いにくい状態になってしまい、やや不満の残る使用感になってしまうでしょう。

しかし、これらの設定を終えると非常に使いやすいキーボードになるので、一手間を惜しむか惜しまないかによってかなり表情が変わるキーボードだと感じました。

明らかにダメとも言い切れず、しかし使い勝手が良いとも言えず、なんとも難しい気持ちになっています。

最終的な性能だけ見ると非常に満足なのですが、そこに辿り着くまでの過程はユーザーフレンドリーかというとなんとも、というのが惜しい。

まとめ

NiZ自体はかなり好きなのですが、正直値段が高すぎて「うーん」といった感じ。

別モデルのTC84は値段も適正で打鍵感も良いので、この値段は出せないけどNiZは使ってみたいという人は、別レイアウトの同メーカーのキーボードを手に取ってみるのも良いかもしれません。

価格抜きで見ればさすがNiZだなといった感じなので使って不満はないですが、価格に対しての性能とか使い勝手を考えると評価が変わってしまいます。

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